「学習用語」の指導法

鍛国研(「鍛える国語教室」研究会)主宰 野口芳宏 


 国語の「学習用語」 

 2行目には「国語科全領域で指導する学習用語(基礎・基本)を明示した教材とその指導法の具体的な提案」と書かれています。先程の模擬授業でも,読解力,話術(話し方),作文と全領域に跨った提案がありました。

さてここに「学習用語(基礎・基本)を明示した」という文言があります。恐らく「学習用語」という言葉は何だろうと皆さんお考えだろうと思います。

この「学習用語」という言葉は「国語修業講」,「鍛える国語教室」研究会,「国語人の会」など私を中心とした勉強会では,ほぼ知られ始めています。しかし,全国的にはまだまだ知られていないです。そのことに触れて,今日の集まりの趣旨を徹底したいと思います。

 同じ例で話をするので,何回かお聴きの方には,「分かっているよ」ということになります。しかし,大事な主張なので繰り返させて貰います。

 

 算数の学習用語

 

一番分かりやすいのは算数です。算数で分数を勉強するのは3年生でしょうか。

それまでは大体,整数関係の指導であります。3年生から分数が出て来ます。そこで,分数という言葉を教えます。これが算数の学習用語です。

 

「これから分数という勉強をするよ。分数というのは分母と分子で出来ているんだよ。下に書くのが分母,上に書くのが分子だ。普通,お母さんの方が大きくて,子どもの方が小さい。3分の2とか5分の3というのは正しい分数だから真分数と言うよ。ところが,子どもがお母さんより大きい分数5分の7,5分の9という分数もある。これは,整数と分数とで出来ているのを分数で表している。だから仮の分数,仮分数という。」

 

このような学習用語を教えます。

 

「仮分数は整数部分と真分数に直せるよ。5分の5というのは1ということがだから,5分の9というのは1と5分の4だ。こういうのを帯分数という。整数を脇に持っている分数だよ。帯びている分数という意味で帯分数という。それから仮分数が出て来たら,真分数に直して,整数と一緒にする。帯分数に直すと分かりやすいよ。」

 

こういうように子どもは毎時間,新しい用語を教えられては,その用語の概念を獲得して計算力を付けていくわけです。

 

「3分の2足す2分の1というのは,足し算が出来ない。分母が違うから足してはいけない。こういうのを異分母という。そこで6分の4足す6分の3というふうに分母を同じにすれば,分子を足してもいいよ。分母を同じにすることを通分,共通の分母にするということで通分という。通分をするためには,分母を同じ数にするために,分子と分母に同じ数をかける。最小公倍数を分母にするんだよ。」

 

こうやって,3年生に教えていくわけです。

3年生は今までの生活言語では全く出合ったことの無い「分子」,「分母」,「通分」,「約分」,「帯分数」,「仮分数」,という抽象的な用語をどんどん身に付けていく。その身に付けた知識を基にして,分数の足し算やら引き算やらを身に付けていくわけです。

2007年2月日(土)第9回国語修業講(札幌会場)札幌ホテルユニオンにて。