「国語力」批判

鍛国研(「鍛える国語教室」研究会)主宰 野口芳宏 


 ついでながら,この頃「国語力」というような言葉がとよく使われています。私はこの「国語力」という言葉を使ったことはありません。私はきちっと国語学力というように「学」という字を入れることにしています。

この「国語力」という言葉が言われ始めたのはつい最近です。文部科学省の教科調査官の井上一郎先生が使われているのです。そういう人がちょっと使うと,ははあと靡いてしまいます。もう少し批判的に,そう言う言葉が果たして妥当かどうか,という言葉に対する感覚が必要です。

「国語力」というのは,一般社会で使う分にはかまわないです。日本人としての「国語力」というのはかまわないです。しかし,学校で教科指導として付けるのはあくまでも学力です。私達は国語の学力形成をするという責任があるのです。国語の授業は,そのためにあるのです。ですからそれを「国語力」という呆けた言葉で言うのは許せないのです。

 この3月,岡山大学を会場に日本言語技術教育学会が開かれます。そこでのテーマも危うく「国語力を高める」となりそうでした。しかし,私は指摘しました。「そういう流行の曖昧な言葉を使いのはだめだ。学会の見識を問われる,きちっと,かたくなに国語学力という言葉を使うべきだ」とです。「それはそうだ」ということになり,国語学力という言葉を使うようになりました。私達は国語人として,一つ一つの言葉にしっかりと正しい拘り方をしながら,言葉を守っていく責務があると思っております。

2007年2月日(土)第9回国語修業講(札幌会場)札幌ホテルユニオンにて。