国語科学習指導案
PISA型読解力を育成する作文指導〜志賀直哉作『清兵衛と瓢箪』を使って〜
平成23年8月3日(水)9時50分〜10時40分,福山市立駅家中2年4組32名,指導者 柳谷直明
1 指導目標 言語活動を通して「学習用語」を指導し,読解力深化と言語活動充実を保障する。
2 指導事項 本時(1/1)の指導目標を具体的に把握する。
□ 言語活動1 討論(A――読解力深化の為の指導語彙,B――言語活動充実の為の「学習用語」)
A 否定,抑圧,諦め,挫折,評価,挑戦,夢,才能,開花。
B 場面(起承転結,山場,結末,時,場,登場人物),中心事件,心情,状況,表層義,深層義,
討論「論題,立場,結論,根拠,反論」,主題「葛藤,価値(善,悪,利他,素直,強靭さ)」。
A 言語活動1での指導語彙や「学習用語」自体の行為化。
B(1)作文――常体,丁寧,句切り符号,鉤,句読点,一文を短く,
改行段落,字下げ,引用,書き出し,1分間3行速度,接続助詞。
B(2)メモ ラベル欄,抽象的,ブランチ欄,具体的,短く,順番,
ナンバリング欄,数字,構成。
□ 言語活動3 交流
A 言語活動1,2での指導語彙や「学習用語」自体の行為化。
B 声量,称賛,笑顔。
3 指導事項を時間的な順序に配列する。(以下,「学習用語」に網を掛ける。)
時配 |
学習活動 |
教師の働きかけ |
備考 |
15分 20分 10分 |
1 討論 志賀直哉が98年前に書いた小説。清兵衛が瓢箪づくりを楽しんでいた。しかし, 授業中に見つかり,先生や 父に怒られ,瓢箪づくりを 止めさせられる話だと知る。 時,場,登場人物,事件,山場,中心事件,結末,心情を理解する。 父が正しいか正しくないか,善悪を判断する。 論題,立場,結論,根拠,反論を学び,行為化する。 音声や文字で発言する。 清兵衛の葛藤やこの作品の価値から主題を決める。 2「授業作文」 学んだ「学習用語」を作文で表現し,習得する。 3 交流 相手に届く声量で読む。 「学習用語」を使い,笑顔で称賛する。発表を楽しむ。自己評価する。 |
1 討論 清兵衛と瓢箪の粗筋を聞かせる。場面(時,場所,登場人物),心情,状況を問う。 教材を配り,山場を教える。 102ページ最終行から読み聞かせる。 なぜ,父に怒られたのか。清兵衛が授業中に瓢箪を磨いていたから。清兵衛は怒られて仕方がない。瓢箪を割られても仕方がない。 論題――清兵衛を怒った父は正しい。―― ○ 父は正しい。なぜなら,清兵衛が悪かったからである。瓢箪を壊されても仕方がない。 × 父は正しくない。大切にしていた瓢箪を壊すことはないではないか。 これらが清兵衛の葛藤である。清兵衛は素直に父に従った。だから,新たな才能を伸ばせた。「挫折に負けない清兵衛の強靭さによる新たな才能の開花」が主題である。 2 「授業作文」 「引用作文マスターカード」で作文の書き方を練習させる。それから,先のメモで書かせる。 3 交流 近くの生徒と作文を読み合わせる。そして,「学習用語」を用いて,称賛させる。音声言語による「学習用語」の行為化で,更に習得させる。「学習用語」の習得を称賛する。 |
・『プランくん』に書かせる。 ・メモで 発言。 ・言語活動の向上的変容を 評価。 ・「学習用語」の行為化を評価。 ・習得した「学習 用語」を各教科等の思考・ 判断・ 表現場面で活用させる。 ・称賛で 国語科 好きにする。 |
4 授業の成否を判定するポイントや反省観点。
「学習用語」を行為化させ,読解力深化と言語活動充実を全員に保障したか。
書き出し例(柳谷直明作)
一 「日時,場」から書き出す。
一月三十日(火)の教室である。『アレクサンダとぜんまいねずみ』の授業が始まった。
二 人物とその行動から書き出す。
柳谷先生がおっしゃった。
「題名から音読,始め。」
三 学習用語から書き出す。
「緩急」
柳谷先生が黒板に書かれた。これが今日学んだ最初の学習用語である。以前から習っていた。しかし,忘れていた。「緩」は「ゆっくり読むこと」である。「急」は「速く読むこと」である。
四 会話文から書き出す。
「姿勢を正して,礼。」
挨拶をした。そして,授業が始まった。
五 評価から書き出す。
私は今日,よくがんばった。なぜなら,次の五つの学習用語を学び,覚えたからだ。
一 緩急
「緩急」とは「緩することと速くすること」である。
六 向上的変容から書き出す。
「『アレクサンダとぜんまいねずみ』。」
題名を音読した。しかし,上手に読めない。なぜなら,最後の「み」を強く読んでしまうからだ。先生に何度もこう指導された。
「最後の『み』を強めない。」
そこで「み」を他の言葉と同じ強さで読もうと心がけた。すると,先生がおっしゃった。
「よし。上手になった。」
このように,題名の音読が今日一つ目の向上的変容である。
七 成長から書き出す。
この時間の私の成長は何か。私の成長は次の五つだ。
一 緩急
上手に音読する技術を学んだ。その一つ目が「緩急」である。私は村君の音読が上手だと思った。だから,○を付けた。しかし,あやちゃんは×を付けた。わたしは驚いた。あやちゃんが言った。
「村君の音読は×です。なぜなら,最初の会話文をゆっくり読んでいたからです。」
八 オノマトペから書き出す。
ガラガラ。
教室の戸が開かれた。先生がいらっしゃった。りゅう君が号令をかけた。