岩見沢市立美園小学校3年3組学級通信
輝き! 22,2008年5月1日(火)柳谷直明発行
『消しゴムころりん』を題名から音読。
余計な話はしない。これだけ言えば,題名から音読する。
しかし,教科書をきちんと開いていない子もいる。そこで,数行読ませて,止めさせる。
なぜ,みんなについていけなかったのか。
教科書を開くのが遅かったからです。
なぜだ。
休み時間に準備していなかったからです。
では,どうする。
休み時間に準備しておきます。
1年生から指導されているはずだ。きちんとする。
文種は何か。(「文種」と板書する。)
文章の種類を短く言うと文種だ。この『消しゴムころりん』は何という文章の種類か。
物語です。
そうだ。(「物語」と板書する。)
物語では,何を読むか。
気持ちです。
気持ちもよい。もっと別の言葉で。
心情です。
ひかちゃんが発言した。
そうだ。外に何を読むか。
発言が無い。
小学校に入って2年間,物語を読ませてきた。釜谷学級でも齋等学級でも同じように指導してきた。それを言葉で覚えておかなくてはいけない。
主題です。
つよ君が発言した。
そうだ,釜谷学級でも主題を読ませていた。(「主題」と板書する。)
主題は作品全体の中心の内容だ。(「中心の内容」と板書する。)
不思議に思ったこと。
いゆちゃんが発言した。
そうだ。不思議に思ったことも読む。それを短い言葉で何と言った。
発見です。
発見は不思議ではなく,分かったことだろう。でも,発見もよい。(「発見−分かること」と板書する。)
不思議に思ったことを何と言ったか。
忘れているものだ。あれだけ2年間言い続けても忘れる。忘れるのだから,どんどん学習用語を教えた方がよいのだ。いつかは忘れなくなるだろう。
問いです。
ひかちゃんだ。
そうだな。問いでもよいが,外の言い方もある。(「問いー不思議なこと/(疑問)」と板書する。)
疑問だよ。でも,問いにしておこう。
外に無いの。ひかちゃん,覚えていないの。
発端とか覚えています。
発端とは,何の始まりか。何かの始まりを発端と言っただろう。
事件。
誰かが言った。
事件の始まりを発端,事件の続きを展開,事件の終わりを結末と言った。物語には事件が書かれている。それを読まなくちゃあ。(「事件−発端,展開,結末」と板書する。)
外に無いか。
変わることです。
いゆちゃんだ。
そうだ。物語では,人間の心が書かれている。心が変わったり,揺れたり,成長したりする。その変わることを何と言う。
変化。
くら君が言った。
変化でもよいが,外の言い方をしていただろう。
変容。
「変」と板書したら,うや君やくら君が言った。(「変容−変わること」と板書した。)
もっと外に,始めに読まなくていけないことがあるよ。
分からないようなので,板書する。20秒くらい待って返答がなければ教える。
場面。
ああ,そうか。
場面では,何を読むか。場面に含まれている言葉だ。
よく分からないようなので,板書した。すると思い出したようだ。
時,場所,人物(「場面−時,場所,誰」と板書した。誰は人物の方がよかった。)
1年生から時,場所,人物を指導してきたでしょう。すっかり忘れている。
時の言葉に○を付けなさい。
いくつかの答えがあった。次の答えだ。
「二時間め」「二時間め」「作文の時間」「作文の時間」
ひろ君の教科書を見ると,「作文の時間」としていた。
確かに「時」に○を付けている。すごいね。みんなと違う所に○が付いている。みんなも2つめを見つけて御覧。
多くの子は「二時間目」に丸を付けていた。でも,それだけではなかった。
岩見沢市立美園小学校3年3組学級通信
輝き! 23,2008年5月1日(火)柳谷直明発行
赤。言葉なので「二時間め」とか「作文の時間」に○を付けているこが正解だ。時だけに○を付けていた子は,それでも間違いではない。しかし,先生は言葉と言ったので,「二時間め」とか「作文の時間」全部に○を付けた方がよい。赤で○を付けておく。
次に何を読むか。
場所。
そうだ。場所を読む。場所の言葉に○を付ける。
これもたくさんあったね。
発表してよし。
「つくえ」。
「つくえ」は物だ。でも,場所とも言える。でも,「つくえの上」の方がよいな。
「ゆかいた」
「ゆかいた」も場所でよい。外にも場所がある。もっと大事な場所だ。
「細長い三角形のあな」です。
そうだ。そこが大事だ。そこに消しゴムが落ちたのが,この物語の始まりの事件だ。
「消しゴムは」から音読する。
「消しゴムは〜ゆきひろと目が合った。」
なぜ,「見回した」のか。ノートに書く。
見回したは二重鉤を付けるんですか。
ひかちゃんの質問だ。
なぜ,「見回した」のか。こう板書して言った。
「見回した」は教科書に書いている言葉なので,鉤を付けるのかどうかというひかちゃんの質問だ。引用の鉤は一重鉤でよい。鉤の中に鉤を書くときは二重鉤になるよ。
はい。
よい返事だ。
まだ一字も書いていない人。よし,いない。
自分の考えを書く授業に,だいぶ慣れてきたようだ。机間巡視で指名計画を立てる。
いち君,起立。発言する。
なぜ,「見回した」のか。なぜなら,消しゴムがないかなと思ったからだ。
いち君の意見に賛成の人は○,反対の人は×をノートに書く。
どっちか分からない。
自分の考えと違ったら×だ。
まだの人。さっさと書く。
○10人,×17人。
○の人,意見を言ってよい。
×の人に反対です。なぜなら,消しゴムがあるかもしれないからです。
×の人に反対です。消しゴムが無くなったから,「見回した」のですよ。
×の人,いいよ。
さおちゃんに反対です。消しゴムは穴の中に落ちて行ったのですよ。もう無いのです。
終了が迫っていたので,正解の子に当てた。
ひなちゃん。
さおちゃんに反対です。消しゴムを落としたのをゆきひろに見られて,はずかしかったから「見回した」のだと思います。
さおちゃん,いいよ。
私の意見を○から×に変えます。なぜなら恥ずかしかったからだと分かったからです。
すごいね。最初から合っていることが大事ではない。自分の考えが違ったなと気づくことが重要だ。よい方向に変わることを向上的変容という。
正解は×だ。消しゴムをなくしたのを誰かに見られなかったかなと恥ずかしくなって「見回した」んだよ。そしたら,ゆきひろが見ていたんだ。これからどうなるかね。楽しみだね。
姿勢を正して,礼。
表層義と深層義
「とっさに,まわりを見回した。」
今日の授業では,この一文の読みと物語の学習用語を特に扱った。
「見回した」と書いてある。だから,「見回した」のだ。書いてあるのが表層義だ。
なぜ,「見回した」のか。このように問いを持つ。そして,その問いの答えを自分で考える。これが自分の意見になる。
「見回した」のだから,「見回した」としか読めないとも言える。しかし,なぜ「見回した」のかと考えると,主人公の心情が読める。それは書かれていない。だから深層義である。
「消しゴムが無いかな。」と読む子がいるだろうと考えて発問した。すると,やはりいた。そうではない。「(消しゴムが無くなったのを)見ていた人はいないかな。見られていたら恥ずかしいな。」これが正解である。するとやはり見ていた。そして,ゆきひろが「見ないふりをして」いるから,さおりは怒っている。
さおりが「むっと」したのはなぜか。表層義では,ゆきひろの「口もとがわらっているように見え」たからである。しかし,それでは読みが浅い。なぜ,「むっと」したのか。
このように表層義と深層義の読みをこの教材で訓練したい。もちろん,表層義と深層義という言葉を学習用語として教える。
さおりが書いた。<そんなゆきひろはすきじゃない>(この書き方が私は好きではない。)
これは表層義である。消そうとしたのだから好きに決まっている。これは○か×か。答えは明らかである。このときの深層義は好きだとは読めない。こんな討論をしても面白い。
教室では,何か楽しい事件が待っている。それは,友達や先生との関係で生まれる。そんな内容が読める作品である。
岡田淳さんはたくさん本を書かれている有名作家なので,外の本も読んでみよう。ゴールデンウィークには,岡田さん探しをしてみようかな。
本心は自分でも分からないときもある。人は口に出している言葉や行動が本心とは限らない。だから,よく考えて読もう。物語では人間が書かれてある。それを読むのが楽しいのだ。