新教育課程の編成手順
200711月執筆開始,柳谷直明)

 


 新教育課程編成手順を少しずつ書き溜めていく。だから,以下は完成版ではない。新学習指導要領が発表させる前に,少しずつ仕事を進める。以下,そういうものだという前提で使って戴けるなら使って貰いたい。

 新学習指導要領では,「言語活動の重視」が求められる。そこで,各教科の指導計画に言語活動を位置付ける必要がある。

 以下,以前の日記と重複するが更に書き加える。このような話を修業講でする。

 

 「教育内容に関する主な改善事項」(『「審議のまとめ」パンフレット』文部科学省,5ページ)を見るとこうある。

 

  各教科等においては、国語科で培った能力を基本に言語活動を充実することの必要性を十分に理解し、言語活動を各教科等の指導計画に位置付け、授業の構成や進め方を改善する必要がある

 

 これは私が主張している「『言語活動』を適正にするために『学校生活全体で』育てる」(柳谷直明著『〈学習用語のカテゴリー化〉で〈国語学力〉を育てる』明治図書出版,110ページ)と同じ発想である。教科間の言語活動の系統化を計画すると「言語活動を各教科等の指導計画に位置付け」ることができる。

 学校全体で必要な言語活動を国語科で指導する。そして,国語科で指導した言語活動を学校生活全体で系統的に扱うという主張である。(来年度の修業講では,教育課程編成講座を入れる。)

例えば次の手順で,言語活動を各教科に位置づけた教育課程を編成する。

ア 各教科で必要な言語活動を各教科の各単元で洗い出す。

イ アの言語活動を各教科のどこに位置付けるかを計画する。

ウ アの言語活動を各教科で扱う前に,国語科で扱う国語科の指導計画を立てる。

このような方法で,来年度から教育課程が編成できる。新教育課程の編成例とその方法は来年度の修業講で提案する。

 

ア 各教科で必要な言語活動を各教科の各単元で洗い出す。

次が参考になる。

「国語科言語活動系統(本シリーズで扱う教材名一覧)」(野口芳宏監修,柳谷直明著・鍛国研空知ゼミ著,『確かな国語学力(基礎・基本)を育てるマスターカード』明治図書,200510月)

 例えば小学1年生でも次のような言語活動を国語科で指導する。

インタビュー,スピーチ,メモ,説明スピーチ,ポスター・セッション,鑑賞発表,作品紹介スピーチ,作戦会議,授業作文

小学1年生にインタビューができるはずがないと小学1年生を担任した経験がない教師は言うだろう。しかし,生活科の教科書にはインタビューという言語活動が紹介されている。そして実際,お店へ行ってインタビューをさせる場面はある。もちろん,小学1年生レベルのインタビューである。だが,小学1年生でもできるようになる。

 

『国語科学習用語一覧』

 

 言語活動指導計画表

 

 

1年

2年

3年

4年

5年

6年

国語

インタビュー

スピーチ

メモ

説明スピーチ

ポスター・セッション

鑑賞発表

作品紹介スピーチ

作戦会議

授業作文

 

 

 

 

 

社会

 

 

 

 

パネル・ディスカッション

ディベート

 

生活

インタビュー

スピーチ

メモ

レポート

授業作文

 

 

 

 

 

算数

説明スピーチ

授業作文

 

 

 

 

 

理科

ポスター・セッション

授業作文

 

 

 

 

 

音楽

鑑賞発表

授業作文

 

 

 

 

 

図工

作品紹介スピーチ

授業作文

 

 

 

 

 

家庭

 

 

 

 

 

 

体育

作戦会議

授業作文

 

 

 

 

 

 

 

 

イ アの言語活動を各教科のどこに位置付けるかを計画する。

 各教科に位置付ける言語活動を大きく次の3つに分ける。

(ア) 授業の導入や展開場面で情報交流をさせるために位置付ける

(イ)授業の終末場面に学習をまとめさせるために位置付ける

(ウ)単元の導入や終末場面に学習をまとめさせるために位置付ける

 以下,詳述する。

 

(ア) 授業の導入や展開場面で情報交流をさせるために位置付ける

 次のような言語活動位置付けは誰でも行っているだろう。例えば,算数科授業でのグループで学び合うための言語活動(話し合い)である。更に,いくつかの情報交流のための言語活動(発表)である。このような言語活動は集団で学び合わせるために効果的な言語活動である。教師が一方的に教え込むより効果的な場合がある。

発表ができない子ができるようになる。話せない子が話せるようになる。そして,言語活動を通して学びが定着する。このような価値が言語活動にある。

これまで行ってきたように情報交流や学び合う場面に言語活動を位置付ける。

 

(イ)授業の終末場面に学習をまとめさせるために位置付ける

 このような言語活動の位置付けが,これまで行われていない。私は10年以上前から,国語授業の最後にまとめ作文を書かせている。または学びスピーチを発表させている。すると,授業で何を学んだかを評価できる。更に,子どもの学習内容が定着する。このような言語活動を国語科以外でも行う必要がある。すると,各教科での学習内容が定着する。例えば,算数科や社会科でも,学び作文(今は「授業作文」と呼んでいる。)を書かせる。すると,その時間の学習内容が定着する。

各教科で毎時間「授業作文」を書かせる。または,「授業作文」を家庭学習でさせる。すると,何を復習してよいか分からないという学習内容の選択にも困らなくなる。

最終的には文章化しないと伝え合えない。したがって,これまでのような話し合い活動や発表活動だけでなく,「授業スピーチ」や「授業作文」を毎時間に取り入れる。

 

(ウ)単元の導入や終末場面に学習をまとめさせるために位置付ける

 これは今までも各教科で行われているだろう。行われていなければ,それは古い授業観である。理科や社会科の教科書を見ても,単元の始まりには関心・意欲を喚起する言語活動があり,単元の終わりには学習をまとめる言語活動が紹介されている。教えたら覚えて置け。このような授業観は私の子どもの頃のそれである。そんな教師は今時いない。例えば,単元の終わりには,次のような言語活動が向いている。

 

 レポート,新聞,スピーチ,ペープ・サート,ポスター・セッション,パネル・ディスカッションなど。

 ペープ・サートが言語活動か。ペープ・サートは物を使ったスピーチと考えれば言語活動でよい。そうすると,他にも劇化なども含まれるだろう。

低学年の生活科では,学習した内容をこのようないろいろな言語活動を選択させて発表させている。その発展を3年生以上の各教科でも行えばよい。他の言語活動もあるが,このくらいにしておく。

 

 このように効果的な言語活動をなぜ、これまで各教科の授業で扱ってこなかったのか。なぜなら,言語活動が適正でない場合には,言語活動の学習効果が無いからである。総合的な学習の時間同様に,這い回る活動主義になっている場合である。だらだらと同じような発表が続いたり,いつも同じ子が話し合いの中心になったりしているのでは,時間の無駄である。効果的ではない。したがって,言語活動を適正にさせる必要がある。

有名な教師の算数での授業実践の本を読んでいると,子どもの発表が適正でないのに驚く。それは教師自らが適正な話し方をしていない証拠である。教師が適正な言語活動モデルにならなければ,子どもの言語活動を適正にできない。(今年の年賀状にこうあった。「この2年間,先生から学ばせていただいたことがたくさんあります。中でも『指示(言葉)は短く,簡潔に!』が私の中で常に生きています。これからも多くの努力をし,活動していきます。」このような謙虚な教師はすてきである。)

このように,各教科の指導計画に言語活動を位置付ける。すると,学習内容が定着する。

 

ウ アの言語活動を各教科で扱う前に,国語科で扱う国語科の指導計画を立てる。

言語活動を扱いたい。適正にできない。したがって,各教科で扱う言語活動は各教科で指導する必要がある。しかし,それでは各教科の指導時数が減るだけだ。そこで,言語活動は言語活動として取り立てて指導する必要がある。それが国語科の使命である。

国語科できちんと言語活動の方法を指導すればよい。しかし,国語科の指導時数もそう多いわけではない。教科書教材だけに追われている教師もいる。したがって,短い時数で効果的に言語活動を適正にする必要がある。その方法が学習用語の明示,指導,評価,行為化である。子どもにとって必要な学習用語を指導する教師が厳選する。そして国語科で指導する。国語科で指導しただけでは,適正な言語活動にはならない。そこで,その言語活動を使う教科でも指導を重ねる。

このように,国語科以外で使う言語活動を国語科で上達・進歩させる。そのためには,各教科で必要な言語活動を使う教科で使う前に国語科で指導する。そうすると,国語科の教育課程が編成できる。当然,教科書教材だけの教育課程では,このような教科間の言語活動を系統的に計画できない。

国語教科書の読解指導は1教材5時間以内に終わらせる。そこで指導した学習用語を国語教科書教材以外の読解指導で使わせる。すると,読解という言語活動が系統的に指導できる。他に,書いたり,話したりという表現活動である言語活動を国語科から書く教科へと系統化させる。すると国語科で学んだ学習用語が各教科で使える。

ここでは特に,授業作文という言語活動の指導を書く。授業作文を各教科で書かせるために,国語科でどのように指導するかである。適正な速度で授業作文が書ければ,各教科での学びを定着できる。かなり効果的であり,必要である。


新学習指導要領の情報

小学校では,新学習指導要領が3年後に完全実施される。するとこの子達は中学生になっている。ところがこの子達が中学生になっても教科書は新しくならない。中学校の完全実施は平成24年,2012年だからである。したがって,中学2年生になって,初めて新しい内容で書かれた教科書を手にする。するとそれまでの4年間は現行の授業時数で,現行の教科書を使いながら,新しい内容も更に学ぶ。そこで移行措置の2年間は次のようになるだろう。

 

小4は小4の教科内容のまま。

小5・6年に小3,4の内容の不足分+小5・6の追加内容もその学年で扱う。

中1で中1の追加内容を学習する。

中2から新しい教科書で追加内容とともに学習できる。

 

各教科等で追加内容を指導する必要がある。特に,算数や理科での追加内容をきちんと指導しないと後々困らせる。理数教科の主な新規学習項目国語はそれほど大きく変わらない。しかし,今まで私が言ってきた言語活動(スピーチや作文など)を通して授業するという授業方法が重視された。それは,国語科だけでなく,各教科等でそのように行う。

 「授業作文」のような言語活動を国語だけでなく,各教科等ですると,その教科での学びが頭に定着する。テスト前はもちろん,普段から「授業作文」を各教科分書けばよい。

上記の表は『理数教科の主な新規学習項目』毎日新聞,2008216日(東京朝刊)からの引用である。

以下,文部科学省の資料を使って作成した。『新学習指導要領』算数科(2008年2月)での新しい内容である。

 

 「新規の内容」は四角枠,「スパイラルのため学年間で重複させる内容」は下線,「学年間などで移行させる内容」は(   )づけ,「算数的活動(知識・技能の活用等の学習活動)」は,ア,イなどで示した。

 

 『新学習指導要領』算数科(2008年2月)での新しい内容

 

1年 次の「算数的活動」を通して指導する。 

ア 具体物を数える活動,イ 計算の仕方を説明する活動,ウ 量の大きさを比べる活動,エ 形を作る活動,オ 場面を式に表す活動

 

A 簡単な3位数など,簡単な2位数の加・減

B 面積,体積の大きさの直接比較,時刻の読み方(小2から移行)

C 身の回りにあるものの形(平面図形,立体図形)の観察や構成 

D 式による表現/加法や減法の場面を式に表す(「A数と計算」から移行),絵や図を用いた数量の表現

 

2年 次の「算数的活動」を通して指導する。

ア 整数が使われる場面を見付ける活動,イ 乗法九九表からきまりを見付ける活動,ウ 量の大きさの見当を付ける活動,エ 長方形などを作る活動,オ 式や図に表し説明する活動

 

A 1万簡単な分数(1/21/4など)など簡単な3位数の加・減など簡単な2位数の乗法(1位数×2位数)

B 体積の単位(ml,dl,l)(小3から移行),時間の単位(日,時,分)(小3から移行)

C 正方形,長方形,直角三角形(小3から移行),箱の形(小3から移行)

D 式による表現/加法と減法の相互関係(「A数と計算」から移行),乗法の場面を式に表す(「A数と計算」から移行),簡単な表やグラフ(「A数と計算」から移行)

 

3年 次の「算数的活動」を通して指導する。

ア 計算の仕方を説明する活動イ, 小数や分数の大きさを比べる活動,ウ 単位の関係を調べる活動,エ 正三角形などを作図する活動,オ 資料を表を用いて表す活動

 

A 1億など 4位数の加・減など,2位数や3位数の乗法(3位数×2位数など)など,1位数による簡単な除法(商が1位数や2位数)など,小数(小4から移行)/小数の意味と表し方,小数(1/10の位)の加・減,分数/(小4,小5から移行),分数の意味と表し方,簡単な分数(同分母の真分数)の加・減

 

B 長さ(km)や重さの単位(g,kg,

C 二等辺三角形,正三角形(小4から移行),角(小4から移行),円,球(小4から移行)

D 式による表現/除法の場面を式に表す(「A数と計算」から移行),式と図の関連付け□などを用いた式など 

 

4年 次の「算数的活動」を通して指導する。

ア 計算の見積りをし判断する活動,イ 面積の求め方を説明する活動,ウ 面積を実測する活動,エ ひし形などを敷き詰める活動,オ 身の回りの数量の関係を調べる活動

 

A 四則計算の見積り(小5,6から移行),整数の四則計算の定着と活用,小数の加・減(1/101/100の位など),小数の乗・除 (小数×整数,小数÷整数)(小5から移行),分数の計算,同分母分数(真分数,仮分数)の加・減など(小5から移行),そろばん ・加・減

B 面積の単位(cm2m2km2a,ha)と測定

C 直線の平行や垂直の関係(小5から移行),平行四辺形,ひし形,台形(小5から移行),立方体,直方体(小6から移行),ものの位置の表し方(平面や空間の位置の表し方)

D □,△などを用いた式,四則計算の性質(小5から移行)

 

5年 次の「算数的活動」を通して指導する。

ア 計算の仕方を説明する活動,イ 面積の求め方を説明する活動,ウ 合同な図形をかく活動,エ 図形の性質を説明する活動,オ 目的に応じて表やグラフを選び活用する活動

 

A 約数と倍数(小6から移行),素数,小数の乗・除(1/101/100の位など),異分母分数(真分数,仮分数)の加・減など(小6から移行),分数の乗・除(分数×整数,分数÷整数)

B ひし形,台形の面積の求め方,体積(小6から移行)/体積の単位(cm3m3)と測定,立方体,直方体の体積の求め方,測定値の平均,単位量当たりの大きさ(人口密度など)(小6から移行)

C 多角形(正多角形を含む)図形の合同(中学校から一部移行)・角柱,円柱(小6から移行)

D 簡単な比例の関係

 

6年 次の「算数的活動」を通して指導する。

ア 計算の仕方を説明する活動,イ 単位の関係を調べる活動,ウ 縮図などを見付ける活動,エ 比例の関係をもとに問題を解決する活動

 

A 分数の乗・除(分数・小数の混合計算など),小数や分数の四則計算の定着と活用

B 面積(小5から移行)/円の面積の求め方,角柱,円柱の体積の求め方(中学校から移行)メートル法の単位の仕組み

C 拡大図と縮図(中学校から移行)対称な図形(線対称,点対称)(中学校から移行)

D 反比例(中学校から一部移行)文字を用いた式(a,xなど)(中学校から一部移行)度数分布,起こり得る場合の数(中学校から移行)

 

 メモ