2005.7.16UP

 第1分科会 国語科学習指導案

論破〜「マスターカード」を使って〜

日時 2005年7月21日(木

児童 岩見沢市立美園小学校 1年2組25

指導者 柳谷直

 


1 教材名 論破〜「マスターカード」を使って〜

 

 2 教材の必要性と目指す理想像

入学当初からみんなの前で話ができる子を目指して育ててきた。なぜなら,みんなの前で話をすることが適正ではなかったからである。

何人かは指導しなくてもみんなの前で自分の名前や好きな食べ物を話すことができた。しかし全員ではない。そこでまず,スピーチを段階的に指導することにした。

「挨拶,氏名,挨拶」の3文スピーチ→「挨拶,氏名,予告,好きな食べ物3つの紹介(3文),挨拶」の7文スピーチ→「挨拶,氏名,目的と予告,好きな食べ物3つの紹介(9文),結論,挨拶,お礼」の15文スピーチとこのような定型を段階的に増やしていった。

15文くらいで1分間スピーチになる。このようなスピーチは全員ができるようになった。

現在の子供達の課題は聞くことと話し合うことである。

人の話の中で,いくつかの大事な言葉を聞き分ける。それを記憶する。これらの聴く能力は,約半数の子が適正だとはいえない。

入門期の教材でそれぞれが想像したことで討論をさせた。勝手な想像から妥当な想像へと話し合いを進めて討論を楽しんでいた。1年生でも何が妥当かと話し合うことができる。しかし全員が討論に参加できるわけではない。

このような課題を解決するために,聴く力と話し合う力を本教材「論破」で育てたい。

「論破」では自分の考えを決めることができる。そして自分と違う意見の人を聞き分けることができる。更に相手へ自分の考えを伝えることができる。こうして自分の考えを深めることができる。

このように「論破」という教材を使うことで,相手を説得するためによく聴き,進んで話し合う子供を育てることができる。

 

3 研究主題との関わり

@              創意ある言語活動を通して

本時の言語活動は「論破」である。「論破」は野口芳宏先生が開発された言語活動である。定義はこうだ。(『野口芳宏第2著作集 授業理論の修業』明治図書,1997年,336ページ。)

「論破とは,合理的説得の技法である。」

低学年はよく発言する。だからこそこの時期に適正な発言を育てる言語活動を扱いたい。

A              基礎・基本の確実な定着を図り

私は国語科の基礎・基本を学習用語(定型と技術)として提案している。

「論破」の定型は「引用,結論,根拠」である。

「論破」の技術は「高低,強弱,緩急,明暗,メモ」である。

これらを「論破」という言語活動を適正にするための基礎・基本とする。

B              生きて働く国語の力を培う

ここでの「生きて働く」を学校生活全体での言語活動の運用としてとらえる。

「論破」という言語活動を通して育てる学習用語(基礎・基本)は国語科や国語科以外の言語活動でも有効である。


 


4 目標達成のための評価計画

学習目標         主な学習活動  評価基準

        論題をとらえ,自分の考えを決める。  ・ ○か×をメモする。 ・ 短くメモしたか。

・ 相手の意見を引用し,自分の意見を言う。 ・ 挙手し,発言する。 ・ 適正に発言したか。

・ 最終意見を書く。            ・ 自分の意見を書く。 ・ 適正に書いたか。

 

5 本時(1/1)の指導目標を具体的に把握する。[1]

(1)           目標(価値目標) 相手の考えを聴いて話し合う楽しさを全員に味わわせる。

      (技能目標) 引用,結論,根拠などを相手を見て,明るい声で発言させる。

(2) 指導事項を時間的な順序に配列する。

時配

学習活動

(児童に培う国語の力)

教師の働きかけ

(基礎・基本――以下の太字――の定着)

備考

10分

 

 

 

 

 

20分

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

15分

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1 お話対話

・メモ無しで,読み聞かせクイズに答える。

・メモ有りで,読み聞かせクイズに答える。

・メモの必要性を知る。

2 論破

・「おおきな木をきりたおして」善かったか悪かったかを決める。

・善かったは○,悪かったは×とその理由を短くメモする。

・次のように発言する。

「〇〇さんに反対です。(結論)〇〇さんは言いました。『△△。』(引用)それは間違っています。なぜなら,〜だからです。(根拠)」

3 意見文

・次のように書く。

「7月21日の国語の時間に論破をしました。

〇〇さんに反対です。(結論)〇〇さんは言いました。『△△。』(引用)それは間違っています。なぜなら,〜だからです。(根拠)」

 4 自己評価

・向上的変容の自覚する。

・話し合いを楽しんだ。

1 お話対話

・『おぼえていろよ おおきな木』(佐野洋子,1992年,講談社)を読む。

・2ページを読み,子供達と問答する。

・聴取メモの必要性を理解させてから『論破マスターカード』を配る。

2 論破

・「おぼえていろよ」の意味を確かめる。

18ページまでを対話しながら読む。

・主発問「ついに切った。『おおきな木をきりたおして』善かったよと思う人は○,そんなことはない『おおきな木をきりたおし』悪かったと思う人は×を書く。」

・人数を調べる。

・「論破」の学習用語「結論,引用,根拠」(定型)を板書する。

・「論破」の学習用語「明暗」(技術)を板書する。

・2人で「論破」の定型を練習させる。

・技術を意識させ,全体で「論破」させる。

3 意見文

・原稿用紙で「改行段落」を指導する。

・日時の1文を聴写させる。

・「論破」の定型を一つの文型例として意見文を書かせる。

・7分くらいで書かせる。その間,机間巡視で面白い意見を見付け,指名計画を立てる。

・3人くらいの子に前で発表させる。

・学びを発言させる。

4 自己評価

・向上的変容を確かめる。

・話し合いを楽しむことができたか。

・導入不要。

・説明無し。

・問いと答えで対話する。

・挙手,発言の仕方を評価する。

・良い言葉ではないことを確かめる。

・おじいさんが願いを叶えたことを理解させてから論破させる。

・太字の学習用語を板書する。

・結論,根拠などの全員のメモを評価する。

・練習段階で全員の発言を評価する。

・人の意見をきちんと引用した意見文を全員が書くことができたかを評価する。

・挙手評価。

・挙手評価。

(3) 授業の成否を判定するポイントや反省観点。

        話し合いの楽しさを全員に味わわせることができたか。

        「討論」を通して「討論」の定型や技術を全員に経験させることができたか。

        他者の意見を引用した意見文を全員に書かせることができたか。 



[1] 野口芳宏著「四 本時の展開法の研究」(「鍛える国語教室 教材研究のための教師向けワークの開発(下)」『教材開発48号』明治図書,1992年1月,72ページ)